館山駅から車で十五分。波の音だけが響く小高い丘のうえに、その宿はある。看板はない。地図にも載っていない。それでも、知る人ぞ知る常連が、この四部屋の宿を二十年通い続けている。
看板のない宿
地元の漁師から「あそこの民宿、いいよ」と教えてもらわなければ、おそらく一生辿り着けなかった。砂利道を登った先、生垣に囲まれた平屋。引き戸を開けると、女将の田中さん(68歳)が「いらっしゃい」と顔を出す。
館山生まれ館山育ち。三十年前にご主人と二人で始めたこの宿を、五年前にご主人を亡くされてから、ひとりで守り続けている。
朝の地魚と、太平洋の朝焼け
夕食は、館山港で朝に揚がったばかりの地魚。アジ、カマス、その日に獲れたものだけを刺身と煮付けで。「今日のは、近所の漁師の幸ちゃんが届けてくれたの」と田中さん。
お客さんが「うまい」って言ってくれるのが、いちばんの仕事のしあわせ。 — 女将・田中さん
朝五時、東向きの部屋の障子を開けると、太平洋の上に朝焼けが広がっていた。湯呑みの茶を片手に、波の音を聞きながら、しばらく動けなくなる。
予約は、電話一本だけ
凪には、ウェブサイトもSNSもない。予約は電話一本だけ。「インターネット?よくわからないのよ」と田中さんは笑う。
大手の予約サイトには載っていない。だからこそ、ここには「探して、見つけて、辿り着いた人」だけが訪れる。それが、この宿の空気を作っている。
INN INFORMATION
- 宿名
- 館山の海辺の民宿 凪
- 所在地
- 千葉県館山市(詳細は予約時にお伝えします)
- 部屋数
- 4部屋(和室)
- 食事
- 朝・夕食付き
- 料金目安
- 一泊二食 12,000円〜(税込)
- アクセス
- JR館山駅から車で約15分
- 予約
- お電話のみ